新年度になり、街には真新しいスーツを身にまとった姿を目にすることがあります。新入社員のみならず、私たちは新しい環境に戸惑いを持ちます。そんなとき「一隅を照らす」という伝教大師(でんぎょうだいし)(最澄、767〜822)のお言葉が胸に響きます。
 伝教大師は、天台宗の宗祖であり、この「一隅を照らす」という言葉は、今自らが置かれている場所で「生きていることを活かしている」ということです。この志は、大師の死後も脈々と受け継がれ、天台宗の総本山である比叡山に学ぶ者にとって大切な教えとなりました。われらが宗祖法然上人(1133〜1212)も15歳の時、出家して以来、およそ30年間比叡山にて過ごされました。比叡山を下りた後も、法然上人を取り巻く環境は、必ずしも平穏ではありませんでした。特に70代の時の、弟子の刑死やご本人に対する配流は、どれだけのご心労であったでしょうか。しかし、法然上人はどんな環境にあっても「一隅を照らす」人、つまり「生きていることを活かしている」人であったと拝察いたします。
 物心ともに目まぐるしく環境の変化するこの新年度ではありますが、「生きていることを活かし」つつ、お念仏の日暮らしを送りたいものです。
(2014年4月)
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