(問) 父母のさきに死ぬるは 罪と申候はいかに (答) 穢土のならい 前後ちからなき事にて候法然上人
「百四十五箇條問答」
命とは、もっとも私の身近なものでありながら、自身の思い通りにならないものであります。愛する人、守るべき人を遺して、亡くなっていくということもあります。そのような事実は、私たちにとって大変受け止め難いことです。しかし、そのような事実を周囲の人が、あれこれと評価することはできないのです。
「百四十五箇條問答」は、法然上人(1133~1212)が様々な人々からの質問に答えられた言葉を集めたものです。この問いは、その中の一節です。質問者の複雑な心模様がうかがえます。その問いに、法然上人の穏やかでいて、かつ信念のある力強くもやさしい答えが響きます。
いかんともし難いこの私の生きる道、人生の問題に解決はないのかもしれません。しかしながら、解決できないと心底から決着したとき、今までと違う自身に出逢えるのではないでしょうか。