今月の言葉 2016年12月

悲しい歌もいつか 懐かしい歌になる 見えない傷が 私の魂彩る

宇多田ヒカル
「道」

 今年も残りわずかとなりました。この一年を振りかえると、さまざまな出来事があったことと思います。うれしいこと、楽しいこと、悲しいこと、つらいこと・・・。心に傷を負った出来事もあったでしょう。
ところで、法然上人(1133~1212)が、9歳の時事件が起きます。政敵によって法然上人の家が襲われ、父・漆間(うるまの)時国(ときくに)公が亡くなります。幼い法然上人は、人が人を傷つけ合う惨状を目の当たりにします。どれほどの心の傷であったでしょうか。その心の傷をかかえ、法然上人は、道を求めました。そして、ついに43歳の春、浄土の御(み)教えに遇い、阿弥陀さまの慈しみの中に悲しみを越える道を見いだされたのでした。
たとえ、法然上人の心の傷は消えなくとも、お念仏によって悲しみを通して本当の喜び・本当の幸せを味わいながら、お浄土の人になられたことと拝します。