今月の言葉 2017年4月

父にだってあきらめたものがあったらう 古い花瓶にたんぽぽを挿す

山田 航 (詩人)

 先日、ふきのとうが雪をわって芽吹いているのを見ました。札幌にも着々と春の足音を感じます。ふきのとうを皮切りに、福寿草、オダマキなど、春の草花が咲き出します。たんぽぽもそろそろけなげに花を結ぶことでしょう。たんぽぽは、ありきたりな花ですが、なにかひたむきさを感じる花です。花に気づかず、踏まれてしまうこともあるかもしれません。しかし、たんぽぽは踏まれてもなお花を咲かせ、種を風にまかせて、生きてゆくのです。
一見、平凡にみえる人生にも、人それぞれ物語があり、思い出があります。その中には、それぞれの悲しみがあり、笑顔があります。それは、唯一の物語です。それは偉人伝には載らないかもしれませんが、人それぞれの静かな伝説であります。
そんなかけがえのない一生を噛みしめながら、たんぽぽのようにひたむきに生きていきたいものです。