心の師とはなるとも 心を師とすることなかれ鴨長明
「発心集」
華道の師・茶道の師・書道の師・舞踊の師・剣道の師…習い事には〝師〟がつきものです。さまざまな「お師匠さん」がおいでですが、すべての師に共通することは、師とはお手本であり、目標であり、案内役・羅針盤であり、よすがであります。
平安末期から鎌倉期という動乱期を生き抜いた鴨長明(1155~1216)は、自らの心を師とすべきでないという仏教の教えに感銘をうけます。私たちの心は、自分でも驚くほどに、喜怒哀楽によってすさまじく変化します。その目まぐるしく変化する心を師(目標・羅針盤)とすれば、行くべき所を見失い、迷っていることにも気付かず、身を疲れさせるのではないでしょうか。
この私たちの心の不安定性に、同時代を生きた法然上人(1133~1212)もまた着目されています。