まことに大悲誓願の深広なる事 たやすく言をもて述ぶべからず 心を留めて思うべきなり法然上人
「往生大要抄」
言葉というものは、私たちの生活において欠くことのできないものです。もしも、言葉のない世界があるとすれば、私たちが日常生活を送る上で大変不便な思いをすることでしょう。言葉は、意思疎通の大切なツールであり、とても便利なものです。しかし、一方では言葉にしてしまうと、虚(むな)しく感じてしまうことや味わいが薄れるような思いにかられることがあります。
ましてや、阿弥陀さまの私たちを救ってくださる大いなるやさしさは、言葉に言い表せないほど、深く広いものなのではないでしょうか。現代に生きる私たちは、ともすれば、目に見えないものや言葉にできないものを排除し、必要のないものとして扱いがちですが、はたして本当にそうでしょうか。
自転車のタイヤを支える道は、幅5㎝もあれば足りるでしょう。しかし、実際には5㎝の道幅では自転車は走れません。一見、必要のないものと思えるものが、私たちにとってすてきなはたらきかけをしてくれているのです。そのことを法然上人は、今もなお私たちに教えてくださっているのです。