老いぬれば 日の長いにも 涙かな小林 一茶
3月に入り、だんだんと日の長さを感じる頃となりました。季節の移ろいを感じる中で、ふと心の琴線に触れ、人として生まれてきたことの意義を味わうような思いに到ることがあります。なんの変哲もない季節の移ろいが、年を重ねるとしみじみと感じられるのも、その年齢に到らなければ味わえない醍醐味であると存じます。
〝時の花〟という言葉があります。20代には20代にしか咲かない花が、30代にもまたその時にしか咲かない花があり、はたまた、40代には40代の、50代には50代の・・・どんな年齢にも、その時にしか咲かない花が、私たちの一生にはあります。その〝今しか咲かない花〟を私たちがそれぞれ咲かせていくことが、ほんとうに生きるということなのかもしれません。
お念仏の念は、今の心と書きます。今の自身を見つめながら、一瞬一瞬を大切に、今しか咲かない花を咲かせていく心が、お念仏の心であると拝察いたします。