今月の言葉 2015年10月

人の世の 憂き悲しみの 谷底を 静かに照らす 弥陀の月影

藤井 実応(総本山知恩院第八十五世門主)

 秋は、お月さまがとても美しく見える季節です。闇夜を照らすお月さまは、如来さまの私たちを救ってくださる光にたとえられます。私たちの心の闇をそっと照らしてくださるのが、如来さまの光です。憂いや悲しみで沈んだ心の底まで、阿弥陀如来さまは知ってくださり、穏やかにかつしっかりと私たちを照らして、決して見捨てないのです。
如来さまの光は、目に見えるものではありません。しかし、感じることはできます。その光を感じるということは、〝私自身〟の問題です。どうしようもない悲しみに、この悲しみを乗り越えることはできないと決着したとき、〝私〟を照らす静かな光を感じることができるのではないでしょうか。