今この願に遇える事は 実にこれおぼろげの縁にあらず よくよく悦び思しめすべし法然上人
「四十八巻伝」第二十五巻
今、お寺の庭には、ぼたんの花が咲いています。毎年この時季になると、あたり前のようにぼたんの花が咲くように思いますが、私たちがこの花を見て美しいと感じることができるのは、とても貴重なことなのです。ぼたんのほうも、水や養分、気温などの様々な条件があいまって花を咲かせます。また、私たちも今生きているからこそ、こうして花をめで、心なごませることができるのです。
さて、私たちが今、人として生をうけ、阿弥陀さまのすべての人を救いたいという願いに、遇えたことは、非常に尊く、稀なことであります。今年もぼたんの花を見て、美しいと感じた事実が、決して当たり前でないように、阿弥陀さまのやさしさを頂戴することは、この上ない得がたい出来事なのです。悲しみの絶えないこの世の中ではありますが、阿弥陀さまのやさしさをしみじみと味わいながら、本当の悦びを感じてゆきたいものです。