今月の言葉 2017年6月

現世を祈るに しるしなしと申す事 仏の御そらごとには候わず 我が心の説のごとくせぬによりて しるしなき事は候なり さればよくするには皆しるしは候なり

法然上人
「百四十五箇條問答」

 私たちは、時として自分では越えられない壁に直面すると、神仏にその解消を祈ることがあります。そして、その困難が解決された時は喜ばしいかぎりですが、そうでない時、“御利益(ごりやく)がなかった”とまた艱難の中をさまようのが、私たちの姿ではないでしょうか。
法然上人(1133~1212)は、そんな私たちをハッとさせるようなお言葉を残しておられます。“御利益”がないのは、仏さまが嘘を言っているのでは決してありません。私の心が真実の生き方をしていないから、御利益を感じられないのです。真実に生きる人は、すべて御利益にあずかるのです。と・・・。実に肝に銘じるべき教えだと痛感します。このお言葉は、法然上人の一方的な訓示ではありません。法然上人ご自身も真実の生き方を求めようとするからこそ、にじみ出る含蓄のあるお言葉だと拝します。